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能美の家

​the house in nomi

​ 田園に囲まれたこの集落は、多くが広い土地に大きく家を構えています。この地域は過去に川の氾濫で水につかった経緯があり、そのため、

この家は約80年前に土地を少し高くして建て替えられたものです。当時は、地域の人が集まって、皆でタコという地ならしの道具を突いて地面を固め、

その上に家を建てたそうです。木材は所有する山から木を切り出し、施主が直接、大工、左官屋、建具屋などを手配して依頼することが一般的でした。

そして、現在よりは時間をかけ丁寧につくられ、完成までに3年はかかったそうです。


 先祖から受け継いだこの家に住むご夫婦は、二人とも定年を前に、快適に住める家にリフォームすることを決めました。

昔からの家は隙間風が吹込み、北陸の冬の寒さが堪えるのが一番の悩みでした。

 建物の地域的な特色として、木を漆塗りで仕上げることがあげられます。柱、梁、敷居に鴨居、ときに天井材も、漆塗りで仕上げられることが

多かったようです。また、和室の赤い色の左官壁や、建具に一枚板の帯戸を使っていることも特色です。この家も、その地域性が見受けられる

つくりになっています。さらに、床の間や明りとりの飾窓、飾り棚、手摺の装飾、いずれも当時の職人の丁寧な手仕事が感じられます。


 最初は、広い和室はいらない、床の間もたくさんなくてよいなど、現状生活での実用面での意見があがりました。そのため、

いくつかは洋室に変えてしまう方向で検討していましたが、改めて和室の状態の良さを見直し、話し合いを重ねた結果、手を加える必要がないところ、

特に建てられた当初からあるところはほとんど残すことになりました。それというのも、約30年前に一度、改修工事の手が入っており、

それが、そのときに新しくつくったところより、当初からあるところのほうが状態が良いという結果を再認識したためです。

新旧の技術の差、つまり近代の簡易な技術ではなく、古くからの伝統で培われた技術のほうが価値があることを目の当たりにし、

状態が良いものは安易に手を加えずに保存する方向へと、考えがまとまっていきました。

​ 間取りのレイアウト案を変えること十数回、紆余曲折はありましたが、落ち着いた案は、変える必要のないところは計画から削ぎ落とし、

変えたほうが良いところはしっかりと変えるという、無理のない計画に辿り着きました。

 折角ある材料を再利用してほしいとのことで、玄関の格子天井や絞り丸太、和室の框や襖の引手などを、

加工して移設したり、新しくつくった家具に取入れました。

縁側の床板を使ってつくったキッチンは、木目が力強い表情をみせています。

ここにしかない素材でつくられたものが出来上がりました。

木造2階建て 一戸建ての住宅 伝統構法+在来工法 ・ 建築面積 331.48㎡ ・ 延床面積 443.04㎡ ・ 工事延床面積 335.60㎡